印南町印南、天然染色意匠家で株式会社H.A.L.Uの天然染料を使った染色加工部門を担当する堀口久美さん(69)が、フランスで開催された第3回アート博inパリに染色アート作品「生命の源」を出展し、最高賞のグランプリに輝いた。堀口さんは環境に負荷をかけないため、すべて天然植物の染料を使用。困難とされていた天然染色黒色を生み出した唯一無二の技術を生かし、1年半かけて作り上げた作品が高い評価を受けた。

フランスでのアート博でグランプリを受賞した堀口さん

 国内のアーティストが海外へ作品を発信する場として開催されており、絵画、書、切り絵など約120点が出展された。主催の株式会社アートクロスの関係者が別の展覧会で堀口さんの作品を見て、アート博への参加を依頼したことで初めて出展した。

 堀口さんは3歳から日本画家に師事し、画家を目指していたが、18歳のときに染色の魅力に衝撃を受けてから50年近く、創作活動を続けている。30代から環境に優しい天然草木染めの研究を本格的に始め、染料となるクチナシ、ウコン、アカネ、藍(あい)の葉などを専門店で購入しているほか、矢車(ヤシャ)は近くの印南若者広場で拾って使うなどすべて天然植物で染めるのがスタイル。天然染色のTシャツやバッグなどの商品をH.A.L.Uブランドとして販売したり、染色ワークショップも開いている。

 出展した作品は細胞分裂をイメージ。約30㌢四方の生地に黒や藍色などを使って表現した。思い描く模様に近づけるため試行錯誤を繰り返しながら何度も試作品を作り、1年半を費やしてようやく納得できる作品に仕上がった。数年前の交通事故の影響で今でも重たい物が持てない中、「夫をはじめ家族の支えなしにはできなかった」と感謝。受賞に「20歳のころ、父の勧めでフランス留学する予定だったが、父が急きょ体調不良となったために断念したことがあったので、フランス開催に縁を感じた。グランプリよりも、いろんな人の協力で、フランスに作品を届けて多くの人に見てもらえたことがうれしい。少しは父への恩返しにもなったかなと思います」と話している。