「やがてお金は絶滅する」そんなサブタイトルがつけられたアルゴリズム・ポエムを使ったビジネスと公共政策のデザインの専門家、経済学博士号をもつ成田悠輔の本作。アルゴリズム・ポエムとは理系的な言葉を使いながら、実際には「未来への願い」や「哲学」を語っている文章なのだそうだ。お金の価値を考えたことはあるだろうか。はるか昔、物々交換から始まり、貨幣や鉱物の金に価値が乗せられていく。私も本当の価値というものが曖昧であり、その価値が誰かの上下によってなされたものであると思い好きではない。成田氏は本書で「古き良き物理国家を新種の情報国家が駆逐していく」と述べる。人々の行動や必要性がデータ化され、アルゴリズムによって最適化されれば、価格や賃金のような単純な尺度に頼らずとも、必要な人へ必要なものが届く社会が実現できるという考えだ。それにより「最後にお金で測られる価値が姿を消す」と語っている。誰がお金持ちか貧乏人かを比べる意味さえ薄れていく未来像である。確かに今の時代、現にチャットGPTなどの生成AIに困りごとを聞き、問題を解決する自分がいる。必要な情報だけを摂取し、幾分か無駄のない心理衛生を保っていることを鑑みると、本書の未来像は決して遠い未来に思えない。誰もが傷つかない平和な時代を期待する一方で、結局アルゴリズムに価値や倫理を覚えさせるのは誰なのか。人間の欲望や都合が入り込むなら、それは形を変えただけで、同じことの繰り返しなのではないか。未来への期待と不安を感じさせる一冊だ。(灯)