5月のテーマは「緑」。1960年代の東京の大学を舞台に、ひたむきな学園生活を送る女性を主人公とする青春群像を描いた長編小説をご紹介します。

 「ウォークinチャコールグレイ」(干刈あがた著、講談社文庫)

 蔦の緑の濃くなる頃、都の西北にある大学の新聞学科に入学した山本信子。新しい大学新聞の創刊を志す男子学生に交じり、新聞作りに励み始める。初恋に心揺らぐ彼女を中心に、60年代という時代を鮮やかに切り取っています。

 冒頭部分、蔦の緑が象徴的に描かれます。

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 働いている間、彼女は時々、会社から印刷物を届けたり広告取りに育途中で大学の前を通り、図書館の蔦を見上げた。夏の夕方、壁をびっしりとおおい尽した深緑色の?質の葉が、風に吹かれて夕陽にキラキラ輝いている光景を見たことがあった。深夜、受験勉強をしている彼女の胸の底で、図書館の蔦がキラキラ輝いていることもあったのだ。(略)今は柔らかそうな若緑色の葉が嬰児の掌ほどの大きさになっている。