印南町ふるさと歴史文化研究室(坂下緋美代表)は、印南の昭和の暮らしを絵本にした「紀州・印南・昭和期子供の遊びと暮らし風景」を発行した。絵を描くのが好きだった印南の庶民画家故浦森勉さんが残した原画に、坂下代表が色付けし、構想から20年越しで念願の完成にこぎつけた。子どもたちが遊ぶ様子、印南祭、漁師町の生活など昭和の日常がよみがえる一冊に仕上がっている。

完成した昭和のふるさと絵本を手に彩色をほどこした坂下代表

 浦森さんは、町内の暮らしや遊びの風景を記憶を頼りに描く天才的庶民画家。昭和南海地震で住民が要害山へ逃げる様子などを描いた作品はさまざまな資料などに使われるなど有名。

 文化活動に精力的な坂下代表は2005年、「昭和の暮らしや子どもの遊びを少しでも後世に記録しておきたいので、協力してほしい」と浦森さんに依頼し、「わしの絵でよかったら」と快諾を受け、昭和の風景の絵本を作ることを企画した。浦森さんは自身の子どもの頃の記憶を絵に描いていたが、10年に脳梗塞で入院。約10年の闘病後、20年12月に他界した。

 原画は多数受け取っていたが、彩色できていたのは数枚。浦森さんの原画を無駄にしたくないと坂下代表は忙しい合間を縫ってコツコツと色付けを行い、さらに見つかった原画も含めて約60枚の絵と、絵をもとに坂下代表が解説などの文章を書き、A4サイズ、フルカラー123㌻の思いの詰まった一冊が完成した。

 昭和5~40年頃の「暮らしの風景」「男の子の遊び風景」「女の子の遊び風景」の3部構成。暮らしの風景では、夏の縁台で物知りなおじいさんが子どもたちに昔話をしている様子やわら草履づくり、稲刈りや船揚げ作業、にぎやかな印南祭を掲載。男の子の遊びでは、竹とんぼやベーゴマ、メンコ、騎馬戦、チャンバラごっこなど、女の子の遊びではおはじき、お手玉、チョイチョイパー、ゴムひも跳びなどが子どもたちの生き生きした表情とともに描かれている。

 有志の寄付、支援金で100部限定で発行しており、希望者に1部2000円で提供する。坂下代表は、浦森さんが亡くなったあとも原画を提供してくれた家族やサポートしてくれた人たちに感謝した上で、「浦森さんは見ないで描く天才であり、なんとしても後世に残したいと思い、彩色に挑戦しました。印南町にこんな庶民画家がいたことと、昭和の暮らしのことを多くの人に知ってもらえるとうれしい」と話している。