「変な地図」は、「変な家」「変な絵」に続く雨穴による「変な」シリーズの一作で、今回は地図をモチーフとしている。2025年の刊行以降、売り上げ面でも大きな反響を呼び、シリーズの集大成と位置付けられている。

 物語は2015年、就職活動中の大学生・栗原が、父から祖母の遺品である古地図を見せられる場面から始まる。祖母はその地図を握りしめたまま不審な死を遂げており、地図には実在しないはずの場所や、妖怪のような不可解な存在が描かれていた。

 違和感に突き動かされた栗原は、地図の謎を追い、海沿いの寂れた集落へと足を運ぶ。そこで出会った民宿の女性・あかりとともに、閉鎖的な地域に残る伝承や不可解な事故、さらに鉄道会社にまつわる不穏な動きに迫っていく。点在していた違和感はやがて一本の線で結ばれ、廃集落や人身事故、トンネルといった要素が連鎖的に意味を帯びていく。

 終盤では、地図に記された「あり得ない配置」の理由が明らかとなり、祖母の死の真相とともに、悲しさと恐ろしさが同時に押し寄せる構造となっている。単なるホラーにとどまらず、人の営みや記憶の歪みが生んだ物語へと収束する点が本作の核だ。

 序盤から中盤にかけてはテンポが良く、違和感が次々と提示されることで一気に読ませる力がある。特に、何気ない配置や出来事が後から意味を持つ構成は巧妙で、読者の視点を幾度も裏切る仕掛けが効いている。雨穴の「変な」シリーズファンにはおすすめの一冊だ。
(城)