4月のテーマは「出会い」。北海道を舞台とした長編ロマン小説をご紹介します。

 雪の断章(佐々木丸美著、講談社文庫)

 孤児・飛鳥が逆境にも負けず幸せをつかむまでの戦いの物語。少女の成長物語にミステリー要素も加わった長編です。

 飛鳥が運命の人として追い求める青年、祐也と幼い日に出会い、そして再会する場面。

  * * *

「どうしたの?」
 ハッとして顔をあげると若い男の人が立っていた。白い半そでのセーター姿だった。(略)初めて見ず知らずの人から受けた親切に戸惑っていた。(略)
「僕かい?」

 この声だ、あの時の声だ!
「やあ、君か、大きくなったね」

 何てあたたかい声なのだろう。(略)
「そうか、お嬢さんのスリッパを君が買いに来てあげたのか。いい子だぞ」

 私の頭に手を置いた。びっくりして見返した。心臓がドキドキして赤くなった。こんなふうに言ってくれたのはこのお兄さんが初めてだ。嬉しさというものを本当に久しぶりで味わった。