国民的映画の一つ、山田洋次監督「男はつらいよ」シリーズを初めて鑑賞した。2019年公開の第50作「お帰り寅さん」。わかやま寅さん会主催のイベント「寅さんとオーケストラとわが街と」でのことだ◆会場の県民文化会館は1500席だが、チケットはほぼ完売。当日高地方からも多くの人が訪れた。初めて大きなスクリーンで観た「寅さん」は、メロンの分け方を巡ってとぼけた口調で真面目くさって周りの人にお説教する姿がなんともおかしく、しかしそのおかしさには表裏一体のように、言うに言えないペーソス(悲哀)が隠れているように思った◆わかやま寅さん会は2013年発足。柴又という街と人との関わりを半世紀にわたって描き続けた映画「男はつらいよ」シリーズを皆に観てもらうことで「わが街」の明日を考えたいとの思いで上映会を続けている◆7回目の企画となる今回は、午前中に映画上映、午後に和歌山市交響楽団によるコンサート、そして山田監督、さくら役でおなじみの倍賞千恵子さんに加え、第50作主演で車寅次郎のおいの満男役の吉岡秀隆さんが出演するトークショーという、盛りだくさんの内容。トークでは吉岡さんも映画そのままの温かい笑顔で、楽しげに監督らと語らっていた◆イベントを支えたのは、地元の高校生スタッフ。開演前には主催者わかやま寅さん会の代表、西本三平さんとスクラムを組んで気合を入れ、イベントが始まると観客を席に案内したり出演者に花束を渡したりと活躍。最後の大合唱では通路にずらりと並んで高らかに声を響かせた◆世代を超え、心一つになったイベント。熱い志を持った人は、その熱量を街全体に伝えて温めてくれるような気がする。(里)