日高川町入野の農業古田義信さん(79)宅に、世界的な博物学者として知られる南方熊楠(1867―1941)の直筆書簡が複数所蔵されている。古田さんの祖父は熊楠と従弟(いとこ)の間柄で、書簡には入野にあった大山神社の合祀に反対する思いがつづられている。書簡は、14日から田辺市中屋敷町の南方熊楠顕彰館で始まる特別企画展で公開される。

熊楠が古田幸吉さんに送った手紙

 熊楠の父は入野出身の向畑弥兵衛。入野から和歌山市へ移って南方家の婿養子となり、妻スミとの間に熊楠が生まれた。古田義信さんの祖父古田幸吉さんの父(善兵衛)と熊楠の父(弥兵衛)は兄弟で、幸吉さんは熊楠の従弟に当たる。幸吉さんは入野で生まれ、農業に従事していた。

 熊楠は大学予備門(現東京大学)を中退後、米国、英国に渡り、1900年(明治33)に帰国した。04年には現在の田辺市中屋敷町へ移住し、明治末期から始まった神社合祀に関して紀南地方を中心に反対運動を展開。神社を合祀することで神社周辺の鎮守の森の生態系が破壊されると訴えた。

 熊楠は当時、日高川町入野地区にあった大山神社の合祀に反対し、従弟の幸吉さんと明治末期から昭和の初めにかけて手紙を送り合い、その書簡が古田家に残っており、幸吉さんから熊楠に送られた書簡の一部は南方熊楠顕彰館に所蔵されている。大山神社は13年(大正2)に土生八幡神社に合祀された。

 義信さんは「熊楠という偉大な人物と祖父の幸吉が対等に話ができたこともすごかったと思う。残してくれた手紙はこれからも大切にしたい」と話し、南方熊楠顕彰館は「神社の合祀反対運動を知る貴重な資料」としている。

 特別企画展は5月6日まで。手紙の一部が公開されるほか、5月3日午後1時半からは田辺市文化交流センターたなべるでシンポジウム「南方熊楠と古田幸吉・大山神社」が開かれる。問い合わせは、南方熊楠顕彰館℡0739―29―9909。