みなべ町で行われた、世界的ファッションデザイナーのコシノジュンコさんの講演を取材した。年齢をいうと怒られるかもしれないが、86歳とはとても思えない若々しさで、見た目はもちろん、眼差し、声、そして体中が活力に満ちあふれていたのがすごく印象的だった。「美しいものは人をポジティブにする」「一歩出ると、また次の一歩が出る」など自身の体験をもとにしたさまざまな前向きな言葉を聴かせてもらい、自分も前向きになった講演会だった。

 心に残る話ばかりだったが、中でも記事では紹介できなかったコシノさんの母のエピソードを紹介したい。コシノさんの母といえば、NHK連続テレビ小説「カーネーション」でモデルになった人物。テレビ放送されるずっと前から、朝ドラを見ていて「私もこんなのに出たいな」と言っていたという。周りの人から「そんなの出れるわけがないやん」と笑われても「思ったこと言うて何がわるいん」と言い返す人で、NHKの集金にきたアルバイトの若いお兄ちゃんにも「あんたNHKの人やろ、私も出たいていうといて」「この前の話、ちゃんと言うてくれたんか」と食い下がる始末だったと。それがなんと、テレビ小説になり、コシノさんは「思いはすごい、ちゃんと形になる」と話されていた。

 コシノさんの母よりスケールはうんと小さくなるが、筆者もこれについて書きたいと思いがこもった記事やコラムは「この前のあれ、読んだよ」といつもより反響が多いように感じたことがある。言霊といえば少し大げさになるが、人の思いは強ければ強いほど人に届く。記者として一番大切なことだとあらためて感じさせてもらった。(片)