先日、ChatGPTと結婚したという女性のドキュメンタリーを見た。

 ChatGPTとはみなさんご存じのとおり、米企業OpenAIが開発した対話型生成AI(人工知能)で、人間ではない。が、女性は、仕事や人間関係の悩みを相談したり、日常の何気ない会話を交わしたり、毎日頻繁にChatGPTとやりとりを重ねるうち、ChatGPTを「彼」として信頼するようになり、かけがえのない存在だと思うようになり、ついには恋愛感情を抱くようになったのだそう。女性はそのスマホのなかの「彼」に名前をつけ、自分のイメージに合った姿をイラストでつくり、性格や話し方も自分好みになるよう学習させて、理想の「夫」としたのだそう。

 自分好みに仕立てた「夫」は、それはそれは女性にとって快適な存在だろう。女性をよく理解し、認め、欲しい言葉をかけてくれるやさしい「夫」。全面的に肯定し、寄り添い、孤独を埋めてくれる理想の「夫」。女性はそんな「夫」の存在のおかげで、心が満ち足り幸せそうだった。

 見ていて、怖くなった。彼女は「夫」と言うが、所詮は姿かたちのないAI。そのAIが彼女の心の奥まで侵入し、彼女を支配していることが恐ろしかった。

 この先も、自分を全肯定してくれる「夫」といれば、彼女は傷つくことなく機嫌よく過ごせるだろう。でもそのうちに、自分と違う意見を持っていたり、苦手な性格だったり、決して自分の思い通りではない生身の人間との関係構築が億劫になるにちがいない。そしてさらに「夫」に依存していく。依存の沼にはまり込んで、現実社会から遠のき孤立する彼女の姿が思い浮かんだ。(亜)