暦の上で一年のうち最も寒さが厳しい時期とされるのが1月5日ごろ(寒の入り)から2月3日ごろまでの寒中。まさに今がそのときだ。日高川町玄子の円通寺住職の豊嶋英雄さん(71)は夜道を歩きながら念仏を唱える寒行を行っている。1981年から毎年欠かさず続けており、今年で45年目になる。そこには信仰に対する強い思いを感じる。
雪の日も大雨の日も、身内を亡くした年でさえ止めることはなかったという。寒行は寒中修行の略で、夜の道を行脚しながら地域の無事を祈る。豊嶋さんがこの修行を始めたきっかけは、副住職だった26歳のとき、「27歳から何かを始めなさい」というお告げのような夢を見たことだという。住職となった今も、祈りは変わらずに続けられている。年齢とともに体力は衰えもあるが、「寒行に出ると、体調が悪くても不思議と元気になる。仏様が背中を押してくれているのだと思います」と、柔らかな表情で話す。
何事も長く続けることは簡単ではない。特に辛さを伴うことなら、なおさらだ。それでも続けられるのは、守りたいものがあるからだろう。豊嶋さんにとって、それはこの地域で暮らす人々の平穏な日常なのかもしれない。
気象庁によると、21日以降、日本列島の上空には強い寒気が流れ込み、「数年に一度あるかないか」の厳しい寒さになる見込みだという。そんな冬の夜も地域を思い、静かな鉦の音と「南無阿弥陀仏」の念仏を響かせている。
効率や合理性が重視される現代社会。目に見えない力を信じ、黙々と続ける行為が人の心を支えていることもある。寒夜を歩くその姿は、地域の人々に安心を与えていることだろう。 (雄)


