今回紹介する本は東野圭吾さんの「素敵な日本人」です。この本は正月やひな祭り、バレンタインデーなど四季折々の行事を題材にした短編小説です。初詣に向かった先で事件に巻き込まれる「正月の決意」や、クリスマスの夜に起きる復讐劇を描いた王道ミステリーのような「クリスマスミステリ」など季節を感じながら物語を楽しむことができます。

 この本の中で私が特に印象に残ったのは「水晶の数珠」です。主人公の直樹は俳優を目指してアメリカで生活しているが、なかなか芽が出ない日々を送っていた。そんな時に姉から父が末期のがんで先が長くないことを知らされ父の誕生日に帰国することになる。空港に到着し実家に向かおうとした時に父から電話があり、もともと折り合いが悪かった父と口論になり、父と顔を合わせることなくそのままアメリカに戻ってしまう。その数週間後、父が亡くなり直樹は葬儀のため再び帰国したのだが、父は直樹に遺言を残しており、その遺言には一家に代々伝わる「水晶の数珠」の不思議な力について書かれていた。前回の帰国の際に父がなぜわざわざ電話を掛けてまで口論になるようなこと言ったのか、直樹は驚きの事実を知ることになる…。この話は父と息子の絆が描かれています。俳優になることを反対され、父とは分かり合えないと思っていた直樹が父の本当の想いを知ったところは感動的で胸が熱くなりました。家族を思う気持ちが心に残る物語でした。その他もファンタジーやSFのような話や、あっと驚くような結末の話などいろいろな物語を楽しめる1冊です。(彩)