14日に第174回芥川賞・直木賞受賞作品が発表されましたが、文学界を超えて社会現象として定着したこの両賞の創設者の一代記をご紹介します。株式会社文藝春秋の創業者でもあります。

 あらすじ 四国の高松で生まれ育ち、上京して夏目漱石の弟子となった菊池寛(ひろし)。「きくち・かん」と呼ばれ始め、その名で数々の作品を発表、「真珠夫人」が大評判となる。多くの作家仲間ができたが、天才肌の親友・芥川龍之介は35歳で自死。「きくちひろし」といつも本名を呼んでくれた芥川を思い、菊池は泣きながら弔辞を読むのだった。一風変わった、破滅的な生活ぶりの直木三十五は人気作「南国太平記」を遺して44歳で病死。2人の友への哀悼を込め、菊池は芥川賞、直木賞という二つの賞を創設する。「受賞者がもしも二十年、三十年と活躍すれば、あまりにも命みじかくして死んでしまった畏友ふたりの魂への埋め合わせができる」。

 人の好む話を分かりやすく書き、人を使う会社経営もやってのけた菊池寛の底力が分かる好著でした。「恩讐の彼方に」「父帰る」「屋上の狂人」等、代表作はどれもテーマが分かりやすく、ほのぼのしたものがあとに残る。本書でその秘密が分かったような気がしました。

 この人はとにかく人間が好きなんですね。世話を焼かせる仲間が気になり、どうしても面倒を見てしまう。社員に裏切られても、どうしても助けてしまう。単に人がいいのではなく、一人ひとりの本質を見抜き、そのうえで長所を尊重して使う。それこそが「楽しいんだ、菊池さんと仕事してると」と人を周囲に集める、根源的な人間力なのでしょう。(里)