言葉を持っているのは人間だけだ。古代ギリシャのアリストテレス以来これが人間の常識であった。進化論を唱えたダーウィンも同じ。これを覆す画期的な研究を成し遂げたのが著者である。これは歴史的な研究として全世界から注目された。また英国動物行動協会国際賞を始め多くの世界的な科学賞も受賞した。TBS『情熱大陸』でも紹介され、筆者はこのテレビ番組で本書のことを知った。

 著者が鳥には言語があると気づいたのは大学三年のときであった。一人で軽井沢を訪れた際、鳥たちの声はいきいきと響いていた。鳴き声に誘われ森の中に入って行くと、三十メートルほど前方から「ディーディーディー」と甘えたような声が聞こえてきた。コガラである。そのコガラの声に、シジュウカラやヤマガラたちが集まってきた。そこにはヒマワリの種が撒かれていたのだ。そのとき彼は「混群の仲間を呼ぶために鳴いていたんだ」と思った。しかしこれは直観である。その直観に基づき世界的な偉業につながる研究へと進むことになったのである。

 「ディーディーディー」が「餌があるぞ、みんな集まれ」という言葉であるということを科学的に証明するための並々ならぬ研究が何十年と続いた。

 そしてその研究論文は世界的な科学雑誌に何度も掲載される。その反響の大きさからストックホルムで開催された「国際行動生態学会」で基調講演を行うこととなった。

 講演会場は世界中から集まった動物学者や言語学者で埋め尽くされた。それもそのはず、言葉を持っているのは人間だけではなく、鳥にも言語があるということを証明した発表だったからだ。そして最後に「動物たちの豊かな言葉の世界を共に解き明かそうではないか!」と言って講演を閉じた。その一時間半の講演のあと、会場は総立ちになり拍手が鳴り止まなかった。また壇上から降りようとすると、握手を求める聴衆の列はとどまることを知らず、「君は科学者の意識を変えた」「人間と動物の二項対立をひっくり返すアプローチだ」「私も鳥の言葉を研究したい」等々、称賛の声ばかり返ってきた。

 帰国後、著者は東大に新しく研究室を立ち上げた。その名も「動物言語学分野・鈴木研究室」。動物言語学という世界で初めての学問分野を開いたのである。

 本書の巻末には、鳥語の解説と共にQRコードが付いている。あなたも一度鳥の言葉を聞いてみませんか?(秀)