
“秘太刀馬の骨”の遣い手は誰か?
時代小説の第一人者藤沢周平は、「たそがれ清兵衛」「蝉しぐれ」「隠し剣孤影抄」等々数々の名作を生み出してきた。しかし、本作が時代ミステリーとは最後まで分からない。藤沢周平は実はミステリー作家という一面もあったのかと思わせる作品である。
ミステリーの定番といえば殺人事件。巧妙なトリックや完璧なアリバイ工作等があり、それらが複雑に絡まって謎が展開される。しかし本作品はそのいずれでもない。
北国の小藩・海坂藩。その筆頭家老が暗殺された。下手人は不明。しかし、「秘太刀馬の骨」が使われた痕跡があった。その犯人探索に立ち上がったのが半十郎と銀次郎の二人。
海坂藩では矢野道場に剣客が多い。その高弟たちに二人は剣を合わせ捜索を開始した。そして秘太刀の遣い手を探す。しかし、遣い手は分からない。
本文の一部を紹介する。
――小声で聞いた。むろん「馬の骨」のことである。銀次郎は首を振った。
「いや、『馬の骨』じゃない。木剣は強く巻き取られたのだ」
その理屈はわかった。「馬の骨」は切り返す剣である。笠松六左衛門もそう言った。北爪は巻き取って二の太刀で死命を制しにかかったのだ、と銀次郎は言い、それは半十郎の見方とも一致している。
――では……。
下男に尋ねた。
ンでがんす(さようでござります)。今日は奥様がこの間、旦那さまのお許しをいただいたように、お寺参りに行く日でがんした。
思いも及ばない展開であった。それが読者を魅了する。(秀)


