和歌山県民でよかったと思える、みかんのおいしい季節がやってきた。つやつやとオレンジ色に光る果実をたくさん頂いたりすると、豊かな気分になる◆国内に「みかんどころ」は数多いが、和歌山県は特に生産量日本一を今年で21年間も続けて居り、突出している。落語の「千両みかん」でも、若旦那が病気になるほど「食べたい」と恋い焦がれたのは紀州のみかんだった◆「古事記」「日本書紀」には「非時香菓(ときじくのかくのこのみ)」というものが出てくる。垂仁天皇に不老長寿の薬としてそれを探してくるよう命じられた田道間守(たじまもり)は、大陸で柑橘類の原種であるカラタチバナを見つけた。これが「非時香菓」とし、日本に持ち帰ったが、垂仁天皇はその前年に亡くなっていた。田道間守は嘆き悲しみ、陵の前で命を絶ったとされる。この田道間守が「非時香菓」を植えたのが海南市の橘本神社であり、田道間守はみかんの神様、お菓子の神様となった。手で簡単にやわらかい皮をむき、みずみずしく甘い果肉を味わえるみかんは、確かにお菓子の祖といっていい◆みかんにはビタミンCをはじめ、さまざまな栄養が含まれる。特に骨密度低下予防に効果のあるβ―クリプトキサンチンは、3カ月も体内にとどまってくれるという。冬の初め、まさに今の時期にしっかり食べておくことが、健康を考えるうえでは有効である◆みかんは冬の季語でもある。「薬のむあとの蜜柑や寒のうち」(正岡子規)。「蜜柑の籠日のふりそそぐ木のもとに」(大野林火)。「蜜柑山黄の微粒子の確(しか)と見ゆ」(山口誓子)。「蜜柑山かがやけり児らがうたふなり」(種田山頭火)。実に温かい、味わい深い季語だと思う。(里)


