
子供の時に流す涙。大人になって流す涙。そして大人になって流せなくなった涙。涙とはいったい何なのか。感情そのものなのか、想いなのか、自分のために、あるいは相手のために流すものなのか。この本は「純粋な涙」をテーマに、涙売りのおじさんと涙を流してばかりの子供がその答えを求めて小さな旅に出る物語です。
本作に描かれる涙は「特別な理由はないけれど、この世のすべての理由で流す世界で最も美しい涙」だと語られています。子供は涙つぼと呼ばれ、予測も理解もできないところで涙を流し、家族に心配され、時には厄介に思われてきました。そんな子どもの前に、黒い服に帽子を深くかぶったおじさんが訪れます。泣いてばかりで居場所がないと感じていた子供は、おじさんと共に「涙を買いたい」という人に会いに行く決断をします。
―かわいらしい見た目のこの本は、まるでお気に入りの小物のように鞄に入れて持ち歩きたくなる雰囲気をまとい、私はその装丁のインパクトに惹かれて手に取りました。けれど中身は大人のための童話といえるくらい短くまとめられた物語で、読み終えたあとはしばらく「読み手に涙を通じて何を求めているのか」と問われた気がしました。単純な物語を単純に受け取ることもできるし、深く焦点を当てれば、自分の思いと重ねていくらでも答えを見つけることができます。
涙を流す意味を子どもと出会う人々がそっと説いてくれる。短い物語だからこそ余白があり、その余白に込めた著書の思いは何なのか。思いの続きを知りたくなる、そんなきっかけを与えてくれる一冊です。(灯)


