文学者の妻、または女性作家ら、明治から昭和までの文学界の女性たち53人を「パワフルな人妻たち」として生き生きと紹介した一冊をご紹介します。NHK朝の連続テレビ小説「ばけばけ」で注目される、小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの妻小泉セツも登場します。

 内容 ギリシャ生まれでアメリカで新聞記者となったラフカディオ・ハーンは来日して松江中学校の英語教師となり、住み込みの女中として「武士の娘がいい」と注文をつける。没落士族の娘小泉セツが見つかるが、ハーンはセツの手を見て「こんなに骨が太いのは武士の娘じゃない」などとケチをつけたりする。しかしひとたび一緒に暮らし始めるとコロリと参ってしまい、結婚。やがてハーンはセツの尻に敷かれるのを喜ぶようになり、45歳で日本に帰化。14年日本に滞在して骨を埋めることになる。セツは古書店から雑誌や絵本や小説を買ってはハーンに読んで聞かせ、また新聞の社会面の記事からハーンが喜びそうなものを選んで読んでやるなど著述の材料を提供。ハーンはセツの解釈を通したうえに自分の想像力を加え、「怪談」などさまざまな名著を著すのだった。(「洋妾(ラシャメン)と呼ばれた賢夫人」)

 そのほか、夫の自死の遺体に「お父さん、よかったですね」と声をかけた芥川龍之介夫人の文。譲渡状で譲り渡された谷崎潤一郎夫人、のちに佐藤春夫夫人の千代子。夫のほかに2人の恋人と同居した岡本太郎の母、岡本かの子。クセの強い「悪妻」が次々に登場します。悪妻も賢夫人も、そのデフォルメのし方が潔いほど徹底していて、笑いを誘います。鮮やかな人間観察を楽しめる一冊でもあります。(里)