噺家と今昔を語る。

 五街道雲助(人間国宝)は『明烏』。

 ―若旦那は堅物で遊びに行かない。心配した親が町内の若い衆に吉原遊郭へ連れて行ってくれと頼む。初めて吉原を訪れた若旦那の驚きの顛末。

 浅草の観音様を抜けて裏手へ、吉原大門跡が存在する。今や遊郭の面影はないが下町の繁華街だけが往時を偲ばせる。

 古今亭志ん輔は『品川心中』。

 ―品川遊郭のお染は金策に困り、本屋の金蔵を誘って心中を図る。海に金蔵が飛び込み、自分も飛び込もうとすると金策が出来たと止められる。先に飛び込んだ金蔵が足を伸ばすと立つことができた。海から上がり、ほうほうの体で逃げ出す噺。

 金蔵が海から上がったのが八ツ山橋。現在は陸橋になっている。

 品川駅はJRや私鉄の電車が行き交う一大ターミナル駅。その線路の上に八ツ山橋が架かる。見晴らしがよく明治時代まで一面の海を見渡せた。今は海も浜も見えない。

 柳家三三は『文七元結』。歌舞伎でも演じられる。

 ―左官の長兵衛は博打の借金五十両で困り果てる。娘のお久は父親のため五十両で吉原へ自分を売りに行く。長兵衛は吉原へ金を貰いに行った帰りに吾妻橋で身投げをする文七と出会う。理由は五十両を掏られたからだという。長兵衛は自分の五十両を文七に渡すが、後に得意先に五十両を忘れてきたことが判明する。文七はその五十両でお久を身請けし、やがてお久と文七は夫婦となって「元結屋」を始めるという人情噺。

 隅田川に架かる吾妻橋から吉原へ、この噺の痕跡を探る。(秀)