先日、和歌山市で開かれた「TОKYОタクシー」特別先行上映会を取材。上映後、山田洋次監督(94)と主演の倍賞千恵子さん(84)の舞台あいさつもあった◆主催はわかやま寅さん会。街の活気復活を願い、山田監督の作品上映会等を続けている。冒頭で代表の西本三平さんは、「映画で街の賑わいは取り戻せるか。やってみなければわからない」と力を込めてあいさつされた◆「TОKYОタクシー」は、倍賞さん演じる85歳の女性高野すみれを、木村拓哉さん演じる個人タクシーの運転手宇佐美浩二が柴又の自宅から葉山の高齢者施設まで送り届ける道中を描く、ロードムービーである。「パリタクシー」を原作とするが、東京の各地がじっくり描かれ、山田監督ならではの味わい。最後には涙する観客が多く、筆者も泣かされてしまった。直後の舞台挨拶は拍手かっさい。映画を鑑賞したすぐあと監督と主演女優のトークを聴けるという、ぜいたくなひとときであった◆山田監督と倍賞さんが、監督と主演女優としてコンビを組むのは、これで実に70作目という。「そのうち50作は『寅さん』です」と、寅さんの妹さくら役でおなじみの倍賞さんは言われた。「山田組は人間の心のあり方、人間を学ぶ『学校』と思っています」。山田監督は、出演俳優には演技をしてもらうというよりも「その人自身を撮る」つもりで撮っているといわれた。人間を、人間の自然な感情を写し取る目線で撮られているから、見る人は知らず知らずその人物に感情移入し、最後には涙せずにいられない◆さりげない偶然の出会いが運命を変えていく、そんな人生の不思議さが温かく描かれる。爽やかな感動をくれる一本である。(里)


