
NHK朝の連続テレビ小説「あんぱん」のモデルとなった、アンパンマンの作者やなせたかし夫妻。波乱の生涯が、身近な人物の手で解説された一冊です。
内容 柳瀬嵩(たかし)は1919年、高知県で誕生。記者だった父は戦時下の中国大陸で若くして客死し、母は嵩と弟の千尋を伯父夫婦に託して再婚。医師だった伯父の家で成長する。時代は米英等を相手とする戦争に向かい、徴兵されて中国大陸に出征。戦場で飢えを経験したこと、千尋が23歳の若さで戦死したことが、のちの「アンパンマン」誕生へとつながっていく。
戦後は郷里に帰り、高知新聞社に就職。そこで「韋駄天おのぶ」とあだ名される元気いっぱいの女性暢(のぶ)と出会い、彼女と共に再び上京。子どもの頃からの夢だった漫画家を目指す。「アンパンマン」は「顔を食べさせるなんて残酷」と大人には不評だったが、幼い子どもたちから自然と大きなムーブメントが起こっていく…。
やなせさんを師と仰ぐ、「詩とメルヘン」元編集者の著者によるこの評伝は、やなせさんの波乱の生涯が抑制のきいた筆致でつづられ、淡々とした書きぶりが一層強くやなせさんの凄さを伝えてくれます。一度は引退を決意したが東日本大震災を受けて「引退なんかしている場合じゃない」と、「奇跡の一本松」の歌をつくって販売収益を被災者に寄付するなど精力的に活動。各地のラジオ局に「アンパンマンのマーチ」がリクエストされ、全国で流れたことが書かれるあたりで、もう涙が止まらない。まさにこの歌の歌詞の通りの人だったと思います。
「あんぱん」を見ていた人にもそうでない人にもお勧めの一冊です。(里)


