先日、ノーベル文学賞の発表がありましたが、年中行事のようにファンが集まって発表を待つ様子をネットニュースで見て和やかな気持ちになりました。村上春樹の肩の凝らないエッセイをご紹介します。

 内容 普段はあまり夢を見ないし、見てもほとんど覚えていないが、空中浮揚の夢だけはよく見るし、どれも不思議なくらい鮮明に覚えている。夢の中では、ぴょんと跳ねてそのまま空中にとどまっていられる。そんなに高くはなく、せいぜい地上50㌢か1㍍くらいのところに欲も得もなくふわふわ浮いている。と書くと、担当編集者のイガラシさんもそういう夢を見るという。彼の場合はいつも地上2㍍ぐらい、部屋の天井近くをふわふわ漂っている。と書くと、今度は読者から「私はこんな飛ぶ夢を見る」というお便りがどっと届いた。小鳥になってすいすい飛び、二階の窓から家をのぞきこんだりして楽しい。でも時々地面に落下して「わっ」と目が覚める。あるいは、誰かに追いかけられて走って逃げるうち知らず知らず空を飛んでいた。追いかけてくるのはいつも、おぎんさんというおばあさん。(空中浮遊クラブ1~3)

 新潟県村上市の隣に朝日村という村があり、連載コラム「村上朝日堂」に親しみを感じている人もいるという。読売村や文春村でなくてよかった。(「村上新聞社と『〆張鶴ツアー』」

 クールで重厚感のある小説とはひと味もふた味も違う、コミカルでとぼけた味わいが特徴。他愛ないテーマで語り口調は軽快だけれども、その向こうにブレない信念が垣間見え、中にはぐっと重いテーマをはらむもの、深く考えさせられるものも多々あります。(里)