世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」が認定10周年を迎え、17日に田辺市のガーデンホテルハナヨで記念式典とシンポジウムが開かれ、県内外から約200人が参加。世界農業遺産等専門家会議委員長で東京大学大学院農学生命科学研究科の八木信行教授が基調講演し、今後の新たな展開として海外の農業遺産認定地域との国際連携等を提案した。

みなべ・田辺地域世界農業遺産推進協議会が主催。オープニングではみなべ町清川の名之内の獅子舞が披露され、華やかに幕開けした。
同推進協議会長を務める山本秀平みなべ町長は「地域住民が主体となって保存や次世代への継承、世界への発信に取り組んでいるのが特徴。これまでの10年で土壌が耕され、種をまいて地域に根差してきた。これからの10年は花を開かせ実を実らせることが重要」とあいさつした。宮﨑泉県知事、公益財団法人地球環境戦略研究機関の武内和彦理事長らも祝辞を述べた。
八木教授は「みなべ・田辺の梅システムの世界的意義とその未来」で講演。農業遺産認定については、今まで気づいていなかった地域の価値を再認識でき、地域のよさを発信できるのがメリットだと紹介した上で、「学校教育と同じで、認定されたからすぐに成果が出るわけではない。20年、30年先を見据えた活動が大切だ」と先の長い取り組みの必要性を訴えた。梅システムを構築している梅や紀州備長炭など、手間暇かけて栽培したものをいかに高く販売していくかが今後の課題だとし、スペインの農業遺産認定地域で行われている付加価値の高い加工肉販売を例に、梅や備長炭も価値を高めていくことが必要だと強調。そのためには国際連携も手段の一つだとし、「スペインのバレンシアはパエリアが有名。備長炭で作ってもらえるよう働きかけるのも一つ。エクアドルのアマゾンで栽培されているカカオを使ったチョコと梅の新たな商品など、同じ農業遺産認定地域とのコラボ商品もできる。そういう展開をしていけばどうか」とアドバイスした。
午後からは日本ウェルビーイング推進協議会の島田由香代表が「和歌山発! 農業遺産が創るウェルビーイングな人と地域」で講演、大阪・関西万博テーマ事業プロデューサーの小山薫堂さんはビデオレターを放映、株式会社オレンジ・アンド・パートナーズの萩尾友樹さんは「万博漬け~2050年に向けて」で講演した。パネルディスカッションは梅生産者や高校生を交えて「未来へつなぐ」で意見交換した。


