今回紹介する本は東野圭吾さんの「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」です。東野圭吾さんの著作はメディア化されている作品が多くありますがこの本も映画化されており、現在劇場版が公開中です。

 ごく普通の名もなき町で元教師の神尾英一が殺害されるという事件が起きるところから物語が始まります。結婚式を間近に控えた英一の娘・真世のもとに事件の一報が届き、真世は父が殺害された現場となった実家に向かう。なぜ父が殺されなければならなかったのか真世は知りたいと願うが、警察は捜査に関する情報は一切教えてくれなかった。そんな時、父の弟で元マジシャンである神尾武史が現れる。武史は「自分の手で真相を突き止めたい」と宣言し、警察から巧みに情報を引き出し、真相を暴いていく…。

 物語の舞台になっているのは再開発が進むさびれた町。かつては観光地として栄えていたもののコロナウイルスの影響で人の流れが途絶え、活気を失っていった様が描かれています。コロナ渦の描写が自分たちが経験してきたこととリンクし、あの頃の不自由さがリアルに思い起こされました。

 元マジシャンの武史は癖のある人間性が面白く、また詐欺師のような手を使いながら次々と謎を解いていくところは読んでいて爽快でした。特にみんなの前で真相を解き明かすシーンはマジシャンのショータイムのようで、読んでいる自分も物語の舞台に引き込まれるような臨場感がありました。エンターテインメント性が高く、読み始めたら最後まで目が離せないような読み応えのある1冊でした。(彩)