一時はいつまでも秋が来ないのではと思うほどの暑さ続きだったが、やはり「暑さ寒さも彼岸まで」ということわざ通り、彼岸の頃から空気が涼やかに澄んできた。10月に入り、本格的な秋の到来である◆一般的には枯れ葉や夕日の色がイメージされる季節かもしれないが、筆者の秋のイメージは鮮やかに澄み通った空の青だ。好きな秋の季語に「秋天」がある。この季節特有の、突き抜けるように高い空。そこにうろこ雲や筋雲など、さまざまな形の雲がくっきりと立体的に現れる。上層の雲と下層の雲が反対方向へ流れるのを見て不思議な気持ちになったりするのもこの季節だ◆「すさまじき雲の走りや秋の空」と詠んだのは近代俳句・短歌の先駆者正岡子規。目に映るものに心を託し写実的に鮮やかに詠む、実に子規らしい句である。その友人の高浜虚子は「秋天に赤い筋ある如くなり」と、青い夕空に現れた赤い筋雲をダイレクトに詠んでいる。虚子にはまた、「秋天にわれがぐんぐんぐんぐんと」と、どこまでも高い空を見上げて自分もどこまでもぐんぐん昇っていくような、晴れ晴れと突き抜けた境地を詠んだ句がある。「秋天」という言葉が持つ、くっきりと明晰でどこまでも深く、また多彩な雲をすべて内包するような豊かさに魅せられる◆近年、地球温暖化によって「二季化」が進んでいるといわれている。夏が長く、また気温の変化が急激になっているため春と秋がどんどん短くなっている、と。物事の見方が極端になり、あいまいさを許さなくなっている昨今の風潮を象徴するようで空恐ろしくもある。中庸を尊び、明晰に真実を見通す姿勢は大切にしたいと、澄み切った秋空を見上げあらためて思う。(里)


