高校ユース陸上の近畿大会は、今年、紀三井寺で開催された。1年生の息子が出る。近畿とはいえ県外開催だと、応援に行くのにちょっと距離があるが、紀三井寺なら高速を使って車でほんの30分。ここは行くでしょ、と張り切った。

 なのに「出番いつ? 応援に行くわ」と言うと「来んでええ」と、息子。「せっかく近畿大会を和歌山で見られるんやから」、「来んでええよ」。そんな会話を繰り返すうち、心が萎えた。遅い思春期か、それとも親離れか、なんて素っ気ない息子の態度。「じゃあいいよ」と、ふてくされた少し寂しい気持ちで、行かないと決めた。

 でも大会が近づくにつれ、練習漬けの日々を頑張る息子の晴れ舞台をやっぱり見たいな、とまた迷い出して、悶々。と、そこに「バアバも行くわ」と母が言い、背中を押された。

 こんなオカンの葛藤など露知らず、息子は「来んでええ」の一点張り。なので、当日は秘密裡に決行。息子に気づかれないようにスタンド席から、遠くのハンマー投げブースを望む格好で観戦した。遠くてよく見えなくて、目を凝らして息子の姿を追った。

 と、4投目か、息子らしき選手がビッグスロー。え? さらに「1位に躍り出ました」とのアナウンスも流れて、え? え⁉ 居ても立ってもいられなくなり、慌ててハンマー投げブースに近い芝生席に移動した。真剣な表情の息子が大きく見えて、心臓がバクバクした。

 競技を終えて、他の選手らと芝生席の方に戻ってきた息子に「おめでとう!」と声をかけた。息子は右手を挙げて、満面の笑顔を返してきた。

 見に行ってよかった。なにより、息子に「なんで居てるん」と言われなくてよかった。(亜)