現在チケットの取れない落語家が五人いる。立川志らく、立川談春、それと柳家三三、女性落語家の桂二葉。最後の一人が、「笑点」でお馴染みの春風亭一之輔だ。

 ここで紹介する春風亭一之輔は「古典落語」の人である。持ちネタは二百五十以上とも云われている。めったに人を褒めることのない人間国宝・柳家小三治が「久々の本物」と評した落語家である。むべなるかな先輩二十一人を抜いて真打に抜擢された。真打とは落語家の最上位の階級だ。

 落語家に入門すると見習として師匠のお世話をする。これは約一年。その後、楽屋入りを許され前座として楽屋働きをする。これが三年ないし五年。その後、お世話を離れて一本立ちすると二ツ目となる。これが十年から十五年くらい。そして晴れて真打である。真打になると師匠と呼ばれ、弟子を取ることも許される。一之輔は入門から十一年で真打となった。

 ではなぜ、一之輔が凄いのか。独演会でのことを採り上げて著者はこのように書いている。

 ――結論からいうと、その日、一之輔が披露した三席はいずれも最高だった。珍しい噺もあったが、どれも聴きやすく、上質で、バカな笑いに満ちていた。(中略)たとえるなら、力を抜いているのに、より速いボールを投げられるようになった投手のようだった。隣に落語初心者の友人がいた。彼は言った。「一之輔さんの落語はフリースタイルのようなしなやかさがあり、客席との緊張感を楽しんでいるようにすら見えました」。

 さあ、みなさん、いい「落語」を聴きに行きませんか。(秀)