
8月のテーマは「涼」。宮沢賢治が岩手県の豊かな自然を背景に描いた童話をご紹介します。
「風の又三郎」(宮沢賢治著、新潮文庫)
小さな学校を舞台に、二百十日前後の夏から秋へ向かう季節の子どもたちの姿を、「風の神の子ども」かとうわさされる不思議な少年の存在を軸に、生き生きと描いています。嵐と、雨上がりの爽やかな場面。
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いつものねずみいろの上着の上にガラスのマントを着ているのです。それから光るガラスの靴をはいているのです。又三郎の肩には栗の木の影が青く落ちています。(略)そして風がどんどんどんどん吹いているのです。(略)いきなり又三郎はひらっとそらへ飛びあがりました。ガラスのマントがギラギラ光りました。(略)
草からはしずくがきらきら落ち、全ての葉も茎も花も、ことしの終わりの日の光を吸っています。はるかな西の碧い野原は、今泣きやんだようにまぶしく笑い、向こうの栗の木は青い後光を放ちました。


