
先日、74歳で他界した音楽評論家、渋谷陽一氏によるミュージシャンとの対談集をご紹介します。
内容 山下達郎、浜田省吾、忌野清志郎、大貫妙子、仲井戸麗市、遠藤ミチロウとの対談と、「必聴」の洋楽アルバムを紹介しながらロックの歴史を解説。ビートルズの登場、ローリング・ストーンズの活躍等、ミュージシャンの眼を通してのロックの歴史を語り尽くしていった一冊。
基本的に音楽はなんでも好きですが、中学時代はフォーク系、高校時代は海外ポップス、大学時代はロックが大好きでした。ミーハー精神に貫かれた「ミュージック・ライフ」、職人気質的な「ロッキング・オン」というまったく対照的な2つの雑誌を愛読していましたが、渋谷さんが20歳で創刊した「ロッキング・オン」は私にとって、音楽を超えて文章表現という点でも勉強させてくれた、個性的な雑誌でした。ミュージシャンのインタビュー以外は読者の投稿で、寄せられる一文はどれも音楽レビューというよりエッセイか短編小説のよう。「水槽のなかの、ジョニー・カム・ホーム」「演歌生活と八百屋のミック・ジャガー」等々、今でもタイトルと内容を覚えている名作もありました。常連投稿者の名前を覚え、文体など読み分けるのが楽しかった。渋谷さんと作家の松村雄策の連載対談「渋松対談」もとても面白く、仲間同士の空気感が好きでした。
本書は山下達郎ら一線で活躍するロックミュージシャンたちが、同年代の渋谷さんとロックを語り尽くす一冊になっています。忌野清志郎、遠藤ミチロウはすでに故人で、貴重な記録。
渋谷さんが(タイトルでは語れないとかいいながら)語りまくっています。本論以外でも、浜田省吾との対談では「当時住んでた家っていうのが、海から二十メートルぐらいしか離れてないという…」「ビーチ・ボーイズを聴くためのような家だ」「夏の終わりにね、ビーチ・ボーイズをかけながら、縁側に座ってスイカをバカバカ食って種をぺっぺと捨てるという…」「日本のウエストコーストしてたんだ(笑)」とか、意外と語りが面白い。全員の音楽への愛が全編に満ちていて、50代以上のロックファンには一読の価値があると思います。
自分が渋谷さんにインタビューしてもらったらどんな風に音楽遍歴を語るだろうなどと夢想したりもしたのでした。(里)


