日高川町鐘巻の名刹で県内最古の寺院、道成寺の小野俊成院主による本紙の連載随筆「宮子姫よもやまばなし」が先日、7月19日付をもって最終回を迎えた。2014年9月から実に11年、全129回に及ぶ。毎月、原則として宮子姫の命日である19日付に掲載。最終回は祥月命日であった◆髪長姫=宮子姫が「文武天皇の夫人となり聖武天皇を生んだ女性で、道成寺の創建に関わったとされる」ときちんと認識したのは本紙記者になってから。連載を担当したことで、より詳しくその生涯をたどることとなった。それは深く豊かな内容を持つ、一人の女性と日本の歴史との関わりの物語である◆日高地方の歴史、宮子姫に似たさまざまな伝説、「藤原宮子」としての古文書の記録等あらゆる角度から考察は為された。周辺の人物、社会情勢などから驚くほどの広がりと深まりを持って古代史を読み解く視点が展開していくことに、僭越ながらただただ感じ入った◆連載終了後、「総集編」として一文をお寄せくださった。連載中に書かれた新説も紹介され、個人的には「初代本尊に用いられたクスノキは遣唐船『速鳥』の部材かも知れない」との説に心ひかれた。遥か大陸から海を越えてきた船が、由緒ある寺院を守るご本尊となる。壮大なスケール感に心が躍る。また、「息子である聖武天皇との36年間の別離は、息子や周囲のことを考え宮子姫が自ら選んだ」等新たな宮子姫像、「まだ見ぬ親をも子は慕うもの」との、母としての宮子姫の心を動かした奇跡の言葉もあらためて示された◆宮子姫に関わる一連の物語は、日高地方のみならず我が国の財産たり得るとの思いを抱いている。長年のご執筆に、謹んでお礼申し上げたい。(里)