坂東玉三郎、尾上菊之助(現菊五郎)主演の松竹シネマ歌舞伎「京鹿子娘二人道成寺」の、御坊市での特別上映を鑑賞した。シネマ歌舞伎はカメラが舞台に上がり、演者を至近距離から撮影している点が大きな特徴である◆主役の「白拍子花子」が2人登場すると、それだけで画面に華やぎが生まれる。同じ衣装、同じ振りだけに、2人の花子の風情の違いがよく分かる。玉三郎丈の花子の凛としたたおやかさ、気品の高さにはため息が出るほど。ほっそりとした身体で為される品格ある所作に惚れ惚れする。菊之助丈の花子はそれに対し、娘らしい愛らしさがあり、明るい。恋する娘のあどけない一途さが表れる。その2人がある時は一体化したように、ある時は光と影のように、ある時は親密さを見せるようにと、さまざまな表情の踊りを披露していく。時として演者と平行に走るカメラワークも面白い。映像の編集には玉三郎丈自身も加わったという。生の舞台とは一味違う、シネマ歌舞伎という芸術を堪能した思いだった◆歌舞伎の世界を描いた映画「国宝」が、全国で「空前の社会現象」と呼ばれるほどのヒットを見せている。創り手と演者の熱量が観客に伝わっている証であろう。その作中でも「京鹿子娘二人道成寺」は極めて重要な演目。道成寺ものと呼ばれる一連の作品の格の高さは、道成寺の地元である当地方としても誇りに感じてしかるべきと思う◆「国宝」がその地元で上映されていないのは残念だが、今回のシネマ歌舞伎特別上映が、優れた芸術作品に触れる貴重な機会であることに間違いはない。ジストシネマ御坊での特別上映はきょう17日までの予定だったが、好評につき24日までに延長されているそうである。(里)


