
最終回の視聴率トップ20のドラマを紹介する番組を見て、「ロングバケーション」「あすなろ白書」等で知られる北川悦吏子さんの本書を思い出しました。
内容 「愛していると言ってくれ」(TBS)は数字も評判もいいが、書いている本人はボロボロ。母が手術を受け、週1回は郷里の岐阜へ帰って付き添いながらシナリオを書く。ある時は食事に当たってジンマシンになり、明日が締切なのに全身かゆくて1字も書けず転げまわる。日曜なので夫と救急病院に駆け込み、薬をもらい、用事で出かける夫と別れ帰宅。鍵がないことに気付く。ホテルに駆け込み、直すべき原稿をプロデューサーにファクスしてもらい手書きする。救急病院帰りなのでコンビニ袋一つ持っただけ、フロントでけげんな顔をされる。「シナリオライターってオイシくない、大変だ!」(「あるズタボロな一日」)
キムタクやトヨエツや業界人と交流する華やかな毎日が楽しく書かれているようですが、読了後感じたのは、一見華やかな世界の中で溺れず的確に舵をとり、しっかりとした仕事を残した人の凄み。軽快な書きぶりの裏に、真摯に物事を見つめるブレない核がある。本気の力のこもった物語だからこそ、多くの人の心をとらえたのでしょう。
昨今のテレビや芸能界を巡る状況には、ひたすら軽く明るかった80~90年代のツケがまわってきている感がありますが、当時のテレビ文化を再評価する視点もどこかで必要になるのではと、今やトップ10でも1けたの数字ばかりが並ぶ視聴率ランキングを見て思うのでした。(里)


