今から11年前の2014年9月、御坊市制60周年記念事業「組踊特別鑑賞会」を取材した。組踊は沖縄の伝統芸能で、演目は「執心鐘入」。安珍清姫に似た物語が、南国を思わせる明るい節回しでうたわれるのが不思議な印象だった。そして今年7月12日、御坊で再び「組踊」に親しむイベントが行われる◆タイトルは「紀州と琉球の縁 道成寺縁起と執心鐘入」。それに先駆けて今月15日、プレワークショップで「琉歌」を学んだ。琉球芸能プロデューサーの大野順美さんが解説し、参加者が琉歌カルタを実践。琉球古典音楽家で沖縄県立芸術大学准教授の新垣俊道さんが三線を弾きながらうたう琉歌を聴き、あの明るい節回しにのったセリフの印象がよみがえってきた◆美少年・中城若松と、彼に思いを寄せて鬼になる宿の女のやりとりなどが、8・8・8・6のリズムと伸びやかなメロディーでうたわれる。宿の女は「いっそ心中しよう」などという意味の激しい言葉で迫るが、独特の節回しが能や歌舞伎の道成寺物とはまったく違う趣を感じさせる◆ワークショップでは参加者が琉歌を詠む場面も。あらかじめ「明け方の空を あかあかと染めて」と上の句が決められ、下の句を皆が考えた。「日高川岸辺 清姫思う」と8・8・8・7になってしまう歌もあったが、新垣さんから「8・8・8・8とする場合もあり、『清姫を思う』にすればいい」とのアドバイスもあり、よりきめ細かく琉歌にふれるひとときとなった◆組踊は1718年、中国皇帝の使いをもてなすため初めて演じられた。「執心鐘入」はその初演の演目の一つである。1700㌔離れた紀州と琉球の縁を、琉歌の調べは300年以上にわたってつないでくれている。(里)


