毎日のように米に関するニュースが流れますが、今月のテーマは「米」。お米本来の美味しさを味わえる日本ならではの道具について語った一冊をご紹介します。
 「暮らしの和道具」(遠藤ケイ著、ちくま新書)
 すり鉢、茶筒、おろし金、鰹節削り器…日本ならではの道具類、実に100種類の使い方、作り方、歴史などを紹介。その一つ一つから、古きよき日本の情景が立ち上がってきます。

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 土鍋だと十五分もあればご飯が炊き上がる。電気炊飯器より早い。できれば、夜寝る前に米を洗って笊に挙げておくともっといい。土鍋で米がグツグツ踊る。炊き上がったご飯を杓文字でサッサッと切り、お櫃に移す。ご飯が傷みにくく、味が変わらない。(略)

 お櫃からよそうご飯には、仄かな母の掌の温もりがあった。甘い湯気の中に、家族の健康を願うやさしい母の顔があった。つましいながらも、そんな小さな家庭の幸せがあった。お櫃は手入れさえしていれば何代にもわたって使える。使い込んだお櫃は、どっしり尻をついた母親のように風格がある。