8年ぶりに日本人横綱が誕生した。弱冠24歳、石川県出身の大の里。初土俵からわずか13場所で横綱昇進という、大相撲史上最速の記録を達成した◆8年前までの日本人横綱・稀勢の里関は、大相撲ファンの母が大のお気に入りだった力士である。5年間の長い大関時代には「稀勢、稀勢」とテレビ画面に向かって熱心に声援を送り、時折金星を挙げた時など特にご機嫌だった。2016年、悲願の綱取りが実現した時の喜びはひとしお。しかし結果的には昇進後わずか2年でけがのため引退。筆者には別にひいきの力士がいたが、母と一緒になって稀勢の里も応援していたので、残念の一言に尽きる思いだった◆その後、母のひいきの力士は高安になった。「表情に愛敬があって優しそう」とお気に入りで、優勝争いにからむたび手に汗を握って応援。今年3月の大阪場所、優勝決定戦で大の里に敗れた時は大層残念がっていた◆夏場所では誰にも勢いを止められないと思わせる圧倒的な強さで優勝した大の里。ニュースを見聞きする中で、元稀勢の里である二所ノ関親方の弟子と初めて知った。四股名をみてもわかりそうなものだが、気づいていなかった。稀勢の里の横綱昇進は史上最も遅い記録となっており、その弟子が史上最速の横綱昇進。高安の初優勝を阻まれたことで複雑な思いを抱いていたが、そうと知ると短期の横綱に終わった師匠の無念を弟子が晴らしてくれたようで、何か嬉しくなった◆何より、来場所から横綱が2人になるのが嬉しい。やはり勝負の世界は、強い者同士がしのぎを削る様が人を惹きつける。角界にわくわくする明るさをもたらしてくれた若いパワーには、一相撲ファンとして感謝したい。(里)