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5月のテーマは「緑」。文豪の娘として生まれ、自身も名作を次々に発表。「おとうと」等が映画化された幸田文の随筆をご紹介します。
「季節のかたみ」(幸田文著、講談社文庫)
明治生まれの著者は「五重塔」等で知られる文豪幸田露伴の娘。きりりとした名文で、季節ごとの思いが綴られます。
山でウグイスの声と緑に活力をもらった経験を書いた一文をご紹介。
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山はだれ一人の影もなく、待てばやがてその鶯がただ一羽、ほおおとうたいだした。 (略)
目をあげると、陽はさんさん、あちらの山の高みから風が湧いて、青葉若葉は金色に緑をゆるがせ、金と緑の風圧順々に吹きおろしてきて、私の頬を裾を過ぎていき、胸にはいまだ消えずに爽やかに、けきょけきょの余韻がなきしきっていた。感動にあふれて立ちつくし、ふと気付いたら私の心は伸びていたし、首は起き胸はまっすぐに整っていた。一生おぼえている五月のうたである。(「伸びる」)


