県の下川放水路整備事業は、下川の氾濫対策として大きな期待を寄せる半面、一部住民から地下に埋設する放水路の影響で周辺の井戸の濁りや枯渇を心配する声が出ているのは既報の通り。事業は2021年度から始まっており、24年度までに測量や設計が終了。今年度当初から着工する予定だったが、こういった不安の声に対応するため、井戸の現状を把握する調査をすることになり、担当課によると着工は年度末か、来年度にずれ込むそうだ。
今回の事業は大雨による周辺民家の浸水被害がたびたび発生している下川の氾濫対策で、新しい地下の放水路をつくって増水した下川の水を日高川へ逃がすというもの。河川沿いには民家が並んで拡幅などの工事が難しいため、放水路が言ってみれば最後の切り札だ。
一方、18㍍道路の地下に埋設される長さ1・5㌔にも及ぶ放水路が、旧御坊町などにある井戸水の源となる日高川からの伏流水を分断するとの不安の声がある。水質検査の結果なども見せてもらったが確かに水質はよく、飲料水にしている人や、食品製造にその水を使っている業者もいる。すでに井戸水への影響があった場合の補償を申し入れている町内会があり、筆者が聞いた中には事業自体の中止を求める声もあった。
ただ命の水は、半面、大雨時には人の命を奪う水にもなる。近年、線状降水帯など大雨被害も激甚化する中で、住民の安全、安心は最優先事項であり、中には県が補償や井戸に替わる仮設の水道管を設置する姿勢を明確にすべきとの意見もある。
県にとっては板挟みの状況だと思うが、住民のことを第一に真摯(しんし)な対応を期待したい。 (吉)

