
5月のテーマは「緑」。ファンタジーの名手、安房直子の季節感あふれる短編をご紹介します。
「緑のスキップ」(安房直子著、講談社文庫「だれにも見えないベランダ」所収)
見事に花の咲き誇る桜の森を守る番人みみずく。愛らしい桜の妖精「花かげちゃん」を守るため、「ここだけはいつまでも花の季節だ」と誰も森に入らないようしっかり見張っています。しかし、やがて季節の巡りは抗うことのできない力で押し寄せます。
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トット トット トット トット
足音は、たしかに、近づいています。(略)
消えいりそうに小さな声が、うすもも色の着物の中から聞こえたのでした。「とうとう、緑のスキップがやってきたわ」と。(略)緑のスキップは、いつも今ごろ、山のほうからやってきて、森や野原をかけめぐり、町の中まではいりこんでいくのです。(略)はじめにひとり、そのつぎからは、まるで波のように、あとからあとからつづいてきます。そして、緑の上に、また緑をかさね、ずんずんその色を、こくしていくのです。


