4月17日は国際更生保護ボランティアの日。更生保護とは事件などを起こし、刑期を終えて社会に復帰した人の生活、再犯防止を支援するボランティア活動。啓発の一環として、東京ではスカイツリー、日高地方でも御坊市庁舎のライトアップが行われた。

 日本では、法務大臣から委嘱された保護司と呼ばれる人たちが、仮出所した人らに定期的に面会し、生活上の悩みの相談に応じながら就職活動等を支援している。この保護司の活動が世界的に注目を集め、アジアを中心に制度の〝輸出〟が本格化しているという。

 人はなぜ罪を犯すのか。理由はそれぞれだが、親や兄弟、友人との関係、学校や職場、生活環境において、愛情や喜び、痛みをあまり感じられなかったか。自らと他人を思いやる心、自制心が十分に育まれなかったのかもしれない。

 罪を犯せば刑務所に入ることにもなる。一般的に、そこは冷たく暗く、自由もプライバシーもないという印象で、誰もがそんなところに入りたくはないのだが、中には自ら望んでいるのか、出所してもすぐに軽微な罪を犯し、何度も刑務所に戻る人がいる。

 そんな年老いた元受刑者の男と保護司の絆を描く吉村昭の短編「見えない橋」で、30回以上も刑務所を出入りしてきた男が保護司に「なぜ自ら舞い戻るのか」理由を聞かれ、刑務所は食事も不十分で自由もないが、真面目でいれば静かで身の危険を感じることもなく、その単調で刺激のない環境にいつしか安らぎを覚えるようになったと答える。

 この古い小説を閉じて見渡せば、このところ、毎日のように残忍な殺人事件が起きている。一見、自由な塀の外の世界に、安らぎを感じられなくなっているのだろう。(静)