日高町の名物クエのキャッチコピーに「一度食ったらほかの魚はクエん」というのがあり、それをパクッたわけでもないが、25年ほど前、映画好きの兄が「これ見たらもうそこらのチャチな(安っぽい)映画ら見やれん」といっていた。

 イタリア系移民の裏社会を描く「ゴッドファーザー」。あの頃はレンタルビデオが全盛で、どの店も名作の棚に並んでいたが、その尺(上映時間)が177分と当時にしては突出して長く、それが重くて手を出せずにいた。

 1990年、第3作の公開が決まり、大きな話題となった。遅れてきた映画通気取りとしては、その公開前になんとしても第1・2作を見ておかねば。前作公開から16年。おそらく、そんな人が大阪・関西だけでもかなりいたのだろう。いまはなきなんばの名画座(南街会館)で第1・2作二本立ての特別上映が行われた。

 第1作はマイケルが襲撃された父の仇をとるため、レストランで敵のマフィアと汚職警官を始末するシーンの緊迫感、第2作はファミリーのボス、ヴィトーの家族と同胞を守る強さとやさしさが、休憩を含め7時間超えのお尻の痛さ以上に心にしみた。

 この名作の第1作をしのぐともいわれる第2作で、若き日のヴィトーを演じたのがロバート・デ・ニーロ(81)。「タクシードライバー」「ディア・ハンター」など代表作はかぞえきれず、若いころにその圧倒的な存在感と演技を引き出した監督たちとの出会いが素晴らしい。

 カンヌ国際映画祭事務局は彼の映画界への功績をたたえ、名誉パルムドール(生涯功労賞)を贈ることを決めた=3面に記事=。映画、ドラマは動画配信サービスが主流のいまも、劇場に客を呼べる数少ない名優であろう。(静)