感謝状を手に津本さん㊧と森岡さん㊨ら

 由良町の衣奈漁港で海に転落した車から高齢夫婦を救助したとして、日高広域消防は28日、地元の漁業津本辰弘さん(65)と田辺市下万呂の土木作業員森岡良太さん(32)に感謝状を贈った。

 同消防と2人によると、今月10日午前8時50分ごろ、衣奈漁港内の波止場から80代の夫婦が乗る軽乗用車が約15㍍先、高さ約1㍍下の海に転落。近くをトラックで通っていた森岡さんは、目撃するや自らの危険を顧みず海に飛び込んだ。また、漁船で出港中の津本さんは沈みかけている車に船を横付け。助手席側の窓ガラスを金づちでたたき割り、助手席の妻を船に引き揚げた。初め浮いていた車がだんだん沈むなか、泳いできた森岡さんとともに協力し、助手席側から運転席の夫を引っ張り出して救出。夫婦は病院に救急搬送されたが、いずれも軽症で済んだ。

 車は運転操作を誤ったとみられており、同消防到着時、完全に水没(水深約2㍍)。当時の水温は約10度だったという。

 本署で阪口悟消防長が人命救助功労で感謝状を贈呈。「転落した車に乗っていた2人は極めて危険な状況で、救助を行うにしても大きな危険を伴うことが想像される。まさに一刻を争う状況のなか、お2人の迅速な行動と連携によって、2人の尊い人命を助けることができた。人命救助に携わるわれわれにとっても大きな喜び。日高広域消防としても引き続き人命救助に全力で取り組んでいくので、今後とも人命救助を含めて救急救命へのご協力をお願いします」とたたえた。

 「漁港で車や人が落ちるのはあること」という津本さんは「目の前で落ち、それを見て助けなんだらねえ」と話し、元陸上自衛官の森岡さんは「車のドアが開かないようだったので、不安もありましたが泳いで向かいました」。2人で「助かってよかった」と笑顔を見せていた。