著者はフジテレビのディレクターやプロデューサーを務めた経歴を持つ。現在は九州で大学教授をしている。本著は著者が実際に見たフジテレビが赤裸々に書かれている。現在フジテレビはCM差し止めなどで大きく揺れているが、その原因は著者が在職していた当時からすでにあったと考えられる。

 著者は、あるとき就職面接を担当した。全国から多くの学生が入社試験に来ていたが、合格の第一は「扱いやすい」人物を選んでいた傾向にあったという。また一九八〇年代から続いていた視聴率三冠王が九〇年代になり日本テレビに奪われた。二〇一一年には三冠王を取り戻したが、八〇年代に掲げていたキャッチフレーズ「楽しくなければ、テレビじゃない」を再び前面に押し出した形で立て直したのだ。有名な番組としては、「オレたちひょうきん族」「笑っていいとも」「THE MANZAI」。ドラマでは「月9」に代表される「東京ラブストーリー」「ロングバケーション」「古畑任三郎」等である。またそれに続く「HERO」「踊る大捜査線」など。これらはいずれもシリアスな中にもコミカルな内容であった。しかし、この「楽しくなければ」というフレーズを次第に取り違えていったのではないか、と著者は書いている。その代表例が、「料理の鉄人」を焼き直した「アイアンシェフ」である。いかにもバブリーな内容であったが時代をはき違え、この「アイアンシェフ」は半年で打ち切られた。そしてフジテレビの凋落は経営者の責任ではないのかと著者は続けるのである。

 一九八八年に日枝久氏が社長に就任し、その結果、「日枝氏の長期政権が組織を硬直化させている」、「日枝氏が睨みを利かせているため、若手が力を発揮できない」等が述べられている。これは現在フジテレビで指摘されている問題と同じではないだろうか。また日枝氏を支える幹部がその意向を「忖度」しているとも書いている。前述の入社試験にもそれは表れている。

 女子アナの「上納」や接待問題に関しても本著では「女子アナのホステス扱い」は確かにあったと書いている。今はもう退職しているある女子アナは云う。「吉野さん(著者)、女子アナって結局ホステスみたいなもんですよ」、とボソッと達観したようにいったというのである。これが二〇一六年の本に書かれていることに驚くばかりである。   (秀)