2月のテーマは「スイーツ」。和の伝統的スイーツ、練り切りについて書かれた一文を紹介します。
 テーブルの雲(林望著、新潮文庫)

 エッセイ集「イギリスはおいしい」で有名になった著者ですが、専門は日本の古典文学。幅広いテーマでの著作があり、本書は「食」をテーマに五つの味覚に分けて書いています。「あまい」の章で、あんこ菓子の魅力を詳しく紹介。

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 さすがに虎屋のは、王者の風格というか、大ぶりでどっしりと鷹揚な風情があるところがめでたい。あのねっとりとした口触り、豆のさらりとした質感と手に持ったときの重い存在感、それでいて爽やかな甘み、美しく練られた色彩と形、四季折々の季節感…。げに、練り切りこそはアンコの固まりにして、もっとも和菓子らしい和菓子だといっても良いだろう。(略)私は、スナック菓子やケーキなんかを食べさせるくらいなら、子供には断然和菓子、ことにアンコものを食べさせたい。