
2月の行事といえばバレンタインデー。チョコだけでなくいろいろなスイーツを贈ることも多く、今月のテーマは「スイーツ」とします。
「お菓子とわたし」(森村桂著、角川文庫)
映画化された「天国にいちばん近い島」で知られる著者。本書は全編スイーツにまつわるエピソード。旅先の奄美大島で親切にしてもらった少女とバナナケーキで交流します。
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お下げの少女が友達に、赤くなって何か言った。「この人、明日誕生日なんです」友達はいった。そして、よかったら私にも来ないかといてくれた。「ほんと!?」知らぬ街で人恋しくてたまらなかった私は感動した。プレゼントにまるのままのバナナケーキがある。(しかし1時間後、宿に少女の父から断りの電話が入る)私は港でそこらの大きな木の空箱に腰かけて、持ってきたナイフでバナナケーキを分厚く切り、たてつづけに二切れ食べてしまった。(略)少女よ、大人は人を疑う。でも疑わなくてもいい場合はいくらでもあるのだ。私は心で泣いていた。泣きながら、バナナケーキをむさぼり食べていた。