1月のテーマは巳年にちなんで「蛇」。博物学的な一冊から、神格化された世界の蛇をご紹介します。
 「怪物の友」(荒俣宏著、教養文庫)

 日本でも白蛇は神様の使いとされますが、古代インドで敬愛された蛇神ナーガ、オーストラリアのアボリジニーに伝わる「虹のヘビ」ユルングル、中米アステカ族の「翼あるヘビ」ケツァルコアトルなど蛇の「神様」は世界中に伝わります。古代インドでは、仏陀の前世はナーガの王族だったという話もあります。

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 インドの人びとに古代から信仰された神聖なヘビの神。(略)あるときナーガの王と王妃が水浴し、ひとりの男子を生んだ。その子は蓮の葉に乗って仏陀として生まれでる。七つの頭をもつナーガの発する光が嵐となって降りそそいでいるあいだは、かれの姿が見えなかったという。そして仏陀は、悟りをひらいてからの最初の仕事として、布施用の鉢にそのヘビ神を入れて飼った。仏陀の弟子たちもまた、ナーガを殺さず、信仰の守護者とみなしたという。