アンネ・フランクという少女が13歳から15歳まで2年間の生活を綴ったノート。それは世界で最も有名な日記となった。2年間の記述では、狭い「隠れ家」で2家族ら8人が息を潜めて暮らす特異な日常が描かれている◆今月26日に御坊市民文化会館大ホールで、劇団RAKUYUの第15回公演「アンネの日記」が上演される。一昨年は小ホールで第14回公演として朗読劇が行われたが、大ホールでの本格的な演劇の舞台は2018年以来実に7年ぶり。活動できなかったコロナ禍の時期を経て、団員も少なくなっているという◆今回「アンネの日記」が演目に選ばれたのは、少ない団員でも上演でき、場面転換も少なく済むなど、実際的な理由からだった。しかし、2022年2月24日のロシア軍によるウクライナ侵攻から世界情勢は一挙に不穏なものとなり、その後、ガザでの紛争も勃発。あらためて戦争と平和について考えねばならない状況となってしまっており、世界情勢を踏まえ平和への祈りを込めて上演されることになった◆中学生の時に読んだ「アンネの日記」では、多感な時期の少女が咳もできない緊迫した生活を強いられ、家族や同居人との衝突、恋などを経験していく様子が克明に描かれていた。8人の中で唯一生き残った父のオットーが残された日記を出版。各国語に翻訳され、一人の少女の過酷な運命が世界で共有されることとなった。戦争の爪痕は今もさまざまな形で世界に残り続けている。それを深く知ろうとする試みは、揺れ動く世界の「いま」を見通すことにもつながる◆タイトルは有名でも、実際には読んだことのない方も多いと思う。極限状況下で精一杯に生きた少女の運命に、地元の劇団の熱演で触れてみてほしい。(里)