今年はクマ出没のニュースをよく目にする。国内のクマ類による人身被害は2023年度が過去最多となり、今年度も同じようなペースで推移。山での食糧不足、耕作放棄地の増加などが原因でクマが人里に下りてくるようになった。和歌山県でも既報の通り今年度は目撃情報が昨年の2倍以上、過去10年間で最多を記録しており、人身被害を懸念する声も出始めた。

 「死んだふりをすればよい」。昔、クマに会った時の対処方法をそんな風に聞いた覚えがある。クマに何度も遭遇した人が「効果あり」と最近でも言っているので、それなりの対処方法ではあるのかもしれない。しかし、一方で雑食性のクマは死んだ魚や動物を食べることがあるため、倒れて死んだふりをすると返って危険だとする専門家の意見もある。クマが活発になるのは繁殖期を迎える初夏。また、いまの秋の時期は冬眠に備えて餌を求めて活発に動くという。

 県ではホームページでクマから身を守るための注意を啓発。クマは警戒心が強く、理由なく人に近づくことはないとし、森に入る場合は鈴や携帯ラジオなどを鳴らしながら自分の居場所を知らせる工夫をする、クマの糞や足跡を見つけたら引き返すなど。そしてクマにもし遭遇してしまったらどうするか。慌てて逃げず、クマをじっと見ながら背中をみせず、ゆっくり離れて行けばよいそうだ。特に子育て中の母グマは神経質になっているため十分な注意が必要だという。熟練のハンターでもない限りとっさに落ち着いた行動ができるのか分からないが、「まさかクマと遭遇することはないだろう」とも言っておれなくなってきた中、とりあえず心に留めておきたい。  (吉)