「スポーツの日」のある10月。テーマは「スポーツ」とします。
 「実感的スポーツ論」(三島由紀夫著、「彼らの奇蹟」玉木正之編・新潮文庫に所収)
 「彼らの奇蹟」にはスポーツに関する古今の短い小説やエッセイ19編が収録されています。その中から、天才肌の小説家で、ある時からボディービルで筋肉美を実現して話題となった三島由紀夫の、体験を交えたスポーツ論をご紹介します。

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 世の中で何がおもしろいと言って、自分の力が日ましに増すのを知るほどおもしろいものはない。それは人間のもっとも本質的なよろこびの一つである。ボデービルはさすがにアメリカで発明された運動だけあって、諸事合理的に理詰めにできており、きわめて徐々にウエートを増し、肉体を改造してゆくのである(略)スポーツは行うことにつきる。身を起こし、動き、汗をかき、力をつくすことにつきる。(略)運動のあとのシャワーの味には、人生で一等必要なものが含まれている。どんな権力を握っても、どんな放蕩を重ねても、このシャワーの味を知らない人は、人間の生きるよろこびを本当に知ったとはいえないであろう。