真田広之がプロデューサー兼主演を務めた米国のテレビドラマ「将軍」がエミー賞史上18部門に輝いた。大谷翔平と並ぶ日本人の快挙に、慌てて配信を契約して見始めたが、これが思った以上に面白い。

 太閤亡きあと、天下人の跡目争いを軸に物語が進む。史実や過去のフィクションとは設定が異なるものの、真田広之がこだわり抜いた日本の真の姿が違和感なく、渦巻く密謀、迫力の合戦が手に汗握る。

 時は400年以上前。有力大名が争うのは領地であり、日の本全体の民の暮らしよりも、敵を撃ち砕き、天下を統一することに命をかける。徳川家康、石田三成ら五大老、五奉行の合議はさながら、現代の国連安保理常任理事国とだぶる。

 五大老は全会一致が原則。1人でも反対に回れば話はもの別れに終わる。同じく5つの核兵器国で構成される平和のための国連安保理常任理事国も、1国が拒否権を行使すれば決議案は否決となる。

 かつて、大陸の領地(満州国)の権益をめぐって国際社会から孤立した日本は、各国の制裁を逃れるため、常任理事国を務めていた国際連盟を脱退するという奇策に打って出た。今回のドラマでも、国連と同じ仕組みを逆手にとった策謀が描かれている。

 他国の領土を力で奪うロシア、人道無視の過剰な反撃をやめないイスラエル。これに対する国連五大国の拒否権連発は、大航海時代の欧州、戦国時代の諸大名と変わりがない。世界は関ケ原の大戦へと向かっているのかも。

 拒否権行使の相手を批判するだけで終わるのではなく、日本は平和への妥協点を見いだす話し合いの努力を求め続けたい。選挙で選ばれし、国、市町のリーダーは独裁の武将であってはならない。   (静)