「両国民の誠意と友好、そして徳をもって隣をなすようにしさえすれば、必ず世代をわたり友好を実現することができる」。2015年5月、当時の自民党総務会長だった二階俊博さんが引き連れた交流団3200人が出席する、中国北京の人民大会堂で開かれた日中文化観光交流の夕べで、習近平国家主席が話した言葉。同行取材の筆者はカメラのファインダー越しに2人が壇上に登場した時、笑顔でがっちり握手を交わした様子が強く印象に残っている。さらに2人が言った日中友好へのキーワードは「民間レベルの交流」だった。その後、両国間の観光客数は飛躍的に増加。中国人の「爆買い」という言葉も登場し、日本にも大きな経済効果をもたらした。
あれから歳月は流れたが、依然、尖閣諸島や歴史認識の違いなどの問題を抱え、最近では日本人短期滞在ビザや牛肉・水産物の輸入の停止、中国軍機による日本の領空侵犯の問題も出ている。そんな中、二階さんが先月27日から29日まで、北京を訪問し、中国要人と相次いで会談。習主席とは会談できなかったが、非常に大切なメッセージを残した。
二階さんは自民党政治資金問題の責任を取る形で今期限りの引退を表明。衆院任期は来年10月まであるが、今月の自民党総裁選の直後に衆院解散の話も出ている。先月の訪中が最後の大仕事ではないと思うが、今回、二階さんが訪中を通じて日中のリーダーに訴えたのは、頻繁に顔を合わせて「直接対話」することの重要性だった。民間交流の礎が築かれた中、次のステップへの方向性が示された。両国の友好深化へ、我が国の新リーダーにかかる期待は大きく、そして責任は重い。 (吉)